「おとぎばなし」


「なあ、お前、その……おん、なだろ?」
「はぁ?」


呼び出されて、どうも様子がおかしいプロイセンに連れてこられた倉庫部屋。
使われなくなって何年もたっているような机に腰掛けたプロイセンが、ようやく口を開い
た。
カーペットに座り込んでから、もう何分も「あー」だの「うー」だの「えーと」だの聞か
されたハンガリーは、プロイセンの言葉に眉をひそめる。
「俺が女なわけないだろ」
ぷぷ、とおかしさがこみ上げてきてつい顔がゆるむ。からかうつもりでプロイセンを見上
げたら、びっくりするほど固い緊張した顔をしていた。
「だって、お前、ちんちんついてないんだろ?」
ほんの少し顔をあかくしてプロイセンが言う。ハンガリーはむっとしたように彼を睨み付
け、立ち上がった。
「大人になったら生えてくるって言っただろーが!もうすぐ生えるんだからいいだろ!」
ちょっと大きな声で言うと、プロイセンも机を降りて、ハンガリーをまっすぐ見た。
「男だったら生まれたときからちんちんついてるもんなんだよ!!」

「……え?」


「だっ、だから!……その、俺も大人とかに聞いてみたけど、あとから生えてくることな
んか、ないって…」
ハンガリーの顔がみるみる凍っていくのを見てプロイセンは思わず目を外らす。
「俺だって、あるし……。お前、なんか胸もふわふわしてるし……」
「お、お前もう生えてんの…?」
「もう、っていうか、生まれたときからあったよ!」
「嘘……」
「だから、お前、おん…」
「見せろ!」
「は!?」
急に表情を変えて、ハンガリーはがば、とプロイセンの腰ベルトに手をかけた。
プロイセンは大慌てでその手を止める。
「な、なんで見せなきゃいけねーんだよ!ちょ、待てよ!」
「なんだよ!ほんとはまだ生えてねーんだろ!?」
「あ、ある、って、言ってんだろ!」
言い合いながらも攻防は続く。相手が男だとしても多少恥ずかしいのに、まして相手はた
ぶん女だ。
いきなり見せろと言われてどうぞ、というわけにはいかないが、ハンガリーは少し楽しそ
うにベルトをひっぱってくる。
「なんだよ、ほんとなら見せてみろよー。どうせまだちっこいんだろー」
「ばっ、ちゃんとあるって言ってるだろ!」
ハンガリーの言葉に、一瞬のスキが出来た。プロイセンのベルトが外れて、ズルリとズボ
ンが下がる。下着も一緒に。
「う、うわぁぁ!」
「……ほんとに生えてら」
「ぎ、ぎゃああ!!」
慌ててズボンと下着を引き上げようとしていたら、なんとハンガリーがプロイセンの股間
にあるものをむんずと掴んだのだ。
急所を掴まれてさすがに力が入らない。ズボンに手をひっかけたまま、プロイセンはハン
ガリーの手元に目をやってしまう。
その手の中で、まだ成長途中の陰茎があられもなくもてあそばれている。
「すげえ、ほんもんだ…」
「ちょ、ちょ……」
引っ張ったり、握ったり。先をちょっとつままれたり。ためらうことなくハンガリーはそ
こをふにふにと手の中でこね回す。
腰にぞくんぞくんと電流のような刺激が走って、プロイセンはさすがにどうにもならなく
てハンガリーの手を掴む。
「や、やめろって、もう、わかっただろ?」
「うん……なんか、堅くなってきた」
「も、もうだめだっ!!」
思わずハンガリーを突き飛ばして、プロイセンは下着とズボンを引き上げた。突き飛ばさ
れたハンガリーはぺたん、としりもちをついたが、その顔は嬉しそうに紅潮している。
「すげえ!お前大人じゃねーか!」
ははは、とハンガリーが笑う。
そして、次に思わぬ行動に出た。
「俺、まだこんなんだぜ?」
あっという間だった。ハンガリーがズボンを下ろした。プロイセンの前に、なにもついて
いない、少し割目のあるふっくらした場所が晒される。
「う、うわあああああああああ!!!!」
「なんか、ここんとこにちっちゃいのは生えてんだけど」
指で、割れたところを少し広げる。見てはいけない見てはいけないと思いながら、プロイ
センの目はそこに釘付けだった。確かに、何か小さく突起のようなものがある。
見たことの無いような綺麗なピンク色だ。
「なあ、ここがちんちんになるんじゃないのか?」
「えっ、あ、いや、」
「違う、のか」
「あ、いや、俺も、わかんねー……けど」
ドクンドクンと胸が大きく高鳴る。自分と違う身体。見たことの無い場所。実は少し、い
や、かなり気になっていた場所。
自分と同じくらいか、それより年上の女はもう、国の中や救護班などにいるせいで関わり
が少なかった。
女性に興味を持ち始めたプロイセンの周りにいるのは男ばかり。水浴びしたってみんな同
じものがそこについてる。

そーっと手を伸ばす。ほとんど、無意識の行動だった。ハンガリーは特に驚いた様子もな
い。
プロイセンの震える手が、その部分に「ちょん」と触れた瞬間――。
「ひゃぁ!」
「わ、わぁっ!!」
ハンガリーは聞いたことの無い高い声を上げて、そのままその場所にへたりこんだ。
プロイセンはびっくりして手をばっと上に上げた。
「わ、悪い!!大丈夫か!!!」
へたりこんだハンガリーに大慌てで声をかけると、ハンガリーは顔をちょっと赤くしてプ
ロイセンを見上げた。
「へ、へーき。なんか、すごい、……なんか……」
もごもご、と何か言う。ハンガリーは自分でもよくわからなかった。自分で触るとちょっ
とくすぐったい場所だが、プロイセンの手が触った瞬間、身体中にびり、と強い刺激が走
ったのだ。
「な、なんだ、今の……」
はふ、とハンガリーが呼吸をつく。違和感を払うように、手はぐいぐいと秘所をさすって
いる。
「だ、大丈夫か、立てるか?」
「平気だって。けど、なんかすげー、びっくりした…」
まだ座り込んだまま、ハンガリーはもう一度はぁ、と息をした。
プロイセンは腰のあたりに感じるむずむずとした感覚がどうにも我慢できなくなって、ハ
ンガリーのそばに座った。
「な、なあ、俺とお前、どこが違うんだろうな」
顔を真っ赤にしてプロイセンが言う。はっきり言って、もうズルイことしか考えられない。
もう一回そこをハンガリーに触って欲しかった。
「お前ほんとに女なのかな。ちょっと、か、確認したほうがいいんじゃねえ?」
「女なわけないと思うけど…」
しかし、最初ほど言葉に確信めいた勢いはなかった。プロイセンの身体と自分の身体が明
かに違うのはわかったのだ。
「もっかい、み、見せてやってもいいんだぜ?」
ハハハ、とわざとらしく笑ってみる。ハンガリーはちょっと怪訝そうな顔をしたものの、
こくりと頷いて見せた。
「もっかい、見てやる」
ごそ、とハンガリーが動いた。彼女の下半身はまだひざ上までむき出しのままだ。
ハンガリーがズボンに手をかけて前を開いてくる。ごくり、とプロイセンの喉が動く。
びん、と跳ねるようにそこが飛び出した。ハンガリーが驚いて目を丸くしている。
下腹に付きそうなほどにそこは張り詰めてしまっていた。プロイセンも自分で驚く。ハン
ガリーは何度も何度も瞬きしている。
「さ、さっきと違う……ぞ」
「お、おう!大人、だからな!」
「そ、そうか…」
「う…!」
ぎゅ、と握られてプロイセンは声を上げそうになった。それをどうにか押し堪える。

あの感じと同じだ、とプロイセンは少し前の出来事を思い出していた。
ハンガリーが女だと分かった日。なかなか寝付けずにそれでもようやく眠りにつき、夢を
見た。
ハンガリーがいた。何か言ってた。笑ってた。
下半身に違和感を感じて飛び起きると、股間がぬるぬると濡れていた。
なにがなんだかわからずに履いていたものをタンスに押し込んで何食わぬ顔で朝食を食べ
に行った。こんな歳になっておねしょするなんて一生の恥だ。あとで埋めるなり燃やすな
りしないと!
しかし、それはすぐに乳母に見つかってしまった。絶対に誰にも言わないでくれ、と泣い
て懇願した自分に、その乳母はその現象を優しく詳しく教えてくれた。
そして、自分の見た夢を思い出して真っ赤になった。

そのハンガリーが、今目の前で自分のそこを手にしている。心臓がばくばくと早鐘を打ち
始める。
ハンガリーは顔をほんのり赤くして、根元の少し下、袋を珍しそうにつまみあげた。
「っ、ぎゃ!」
「…これ、何?」
「や、だから、それは……」
説明するよりも先に、ハンガリーの手はその奥へ潜っていく。とんでもないところを指で
ごそごそと触られて、プロイセンはもう目が回りそうだった。
「……あれ?」
ハンガリーがぴたり、と手を止めた。何故か性器の後ろの、何もないところをごちょごち
ょ弄ってくる。
「な、何して……」
「……ない」
「え?」
「ここ、もういっこ穴があるだろ?」
「……へ!?」
自分の身体のことは分かっているつもりのプロイセンだったが、そんなところに穴がある
わけがない。
「尻の穴はもっと後ろだぞ…」
「いや、それじゃなくて…」
「ションベン出るのは、ここの先っぽだぞ」
かー、と顔が真っ赤になる。ハンガリーはそうなのか、と言ってから、それでももう一度
首を振った。
それじゃなくて、とまた何も無いところをごそごそ触る。
「ちんちん生えてきたら無くなるのか?」
「ど、どの穴のことだよ……」
本当にわからなかった。穴は二つに決まってる。何の話だ?
「だって、俺は……ここに、もういっこへこんでるとこがある」
「え……え?」
「ちょっとだけ触ったら、なんか、……穴みたいになってたから」
「ま、マジで?」
「うん」
そう言ってハンガリーは少し足を開いた。
「…触ってみていいぜ?」
「お、おう」
ここまで曝け出したらもう恥ずかしい気持ちも吹っ飛んでいた。ハンガリーは本当に自分
と違う身体なんだ、ということが頭の中でぐるんぐるんと廻っていた。
手を伸ばして、ハンガリーの足の間にそーっと差し込む。少し緊張した顔のハンガリーを
ちらりと見てから、指を怖々とその隙間にすべりこませた。
「んっ」
「わ、わ……」
ハンガリーがぴくん、と震えた。一本だけ割り込ませた人差し指に、湿った感触があった。
「な、なんか、濡れて……」
「ちびってねーぞっ」
「そんっ、わか、わかってるよ!」
指を軽く折り曲げると、そこには確かに窪みがあった。自分には無い……自分とは全く違
う形をしている。
「あっ……」
「へ、変な声出すなよっ!」
指が窪みの奥へ動き、深くなっている入り口へ到達した途端にハンガリーが高い声を上げ
た。
どくんどくん、と胸と頭と下半身が一緒になって大音響を奏でる。ここに、もしかして、
ここに。
指を、もう少しだけ奥に……。

その時。

「ハンガリー!ハンガリー!?」

びくっ!と二人は同時に驚いて飛び上がった。
「俺のとこの上司だ!」とハンガリーが言って、身体があっという間に離れる。指先に触
れていた温もりは嘘のようになくなった。
ごそごそ、とハンガリーがズボンを上げる。パンパン、と埃を払うように服装をなおした。
「悪い、探してるみたいだから行ってくるな!あと、俺が女かもしれねーこと秘密だから
なっ!」
呆然として下半身を晒しっぱなしのプロイセンを置いて、ハンガリーはさっさと部屋を出
て行った。

しばらく頭が動かなかった。頭が真っ白だった。
ようやく我に返って下半身を見ると、そこは、あまりに驚いたせいかへたりと萎えていた。

「チクショウ……」

ちょっとべそをかきながら、プロイセンはズボンを直す。まだ熱はむずむずと残っている。
次に向かう先は手洗いになりそうだった。






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いろいろヤバそうなネタですがどうしても書きたかったので投下!